アニマルセラピーとは、動物とのふれあいを通じて、心と体を安定させるための療法のひとつで、多くの施設などで活動が行われています。
活動に参加している動物は様々で、犬、猫、うさぎ、馬、イルカなどの種類の動物がアニマルセラピーを行っています。
どんな動物がアニマルセラピーに向いているのか?
また、アニマルセラピーに向いていない動物もいるのか?
その理由も合わせて解説していきます。
アニマルセラピー現場で活躍している動物
実際のアニマルセラピーの現場では、犬、猫、馬、ウサギ、イルカなど、数多くの動物が活躍しています。
犬
施設や病院を中心に、全国で行われているアニマルセラピーのほとんどの場所で犬は活躍しています。
犬は集団生活を好み、古くからヒトと助け合うことで生活をしてきました。
狩りを手伝う狩猟犬や、牧畜で活躍する牧羊犬などに支えられて、ヒトは生きてきました。
現在では、盲導犬や警察犬などの役割をもつ犬だけでなく、ペットとしてヒトに寄り添う良きパートナーとなっています。
犬のアニマルセラピーによって、高齢者や障害者などの精神と身体を安定させる効果が数多く報告されています。
犬はしつけがしやすく、ヒトと一緒にいることを好むために、様々な場所でのセラピーに参加することができます。
猫
今や、犬よりも猫の方が飼育数が多くなっており、絶大な人気を誇る猫ですが、アニマルセラピーの現場でも、その力を発揮しています。
猫カフェの人気をみても分かるように、猫の仕草は見ているヒトの心は癒されます。
猫の性格にもよりますが、人懐っこく甘えん坊な性格をしている猫なら、アニマルセラピーの現場で活躍することができます。
撫でられる心地よさを、ゴロゴロと喉を鳴らし、分かりやすく伝えてくれることも、セラピーを受ける対象者にとってはプラスに働きます。
ただ、猫は犬よりヒトに寄り添うことを好まない個体が多いので注意が必要です。
馬
今となっては様々な動物で実施されているアニマルセラピーの1番最初は「馬」から始まりました。
古代ローマ時代、負傷した兵士のリハビリに乗馬を用いたことが、起源だとされていて、現在でも、乗馬によるセラピーが行われています。
馬の大きな体と穏やかな性格を活用したセラピーは、心身の障がい者に特に良い効果があるとして医療、福祉に活用されています。
犬、猫など小さな動物と違い、自分の体を委ねることができるのが、馬によるセラピーの最大の特徴ともいえます。
馬に乗ることで伝わる、馬の温もり、振動などが良い刺激となり、安心感が得られたりストレスが軽減される効果があります。
また大きな動物を操る成功体験によって、自信を得ることができます。
馬がもたらすアニマルセラピーの効果は大きいのですが、馬の体の大きさから、セラピーの実施場所が限定されます。
ウサギ
ウサギによるアニマルセラピーの歴史も古く、現在のアニマルセラピーの形に近いセラピーは、18世紀末にイギリスの精神障害のある患者にウサギを飼育させることから始まりました。
ウサギの飼育経験から、患者は自制心を保つことができるようになったと記録が残されています。
よく、「ウサギは寂しいと生きられない」と言われますが、そのような繊細な印象を受けるウサギの存在は、ヒトの守ってあげたくなる心を刺激してくれます。
ウサギによるアニマルセラピーを行うことで、精神的な安定や、生き物を守り、大切にする心を育む効果が得られます。
ですが、ウサギは環境の変化や温度、音などのストレスに弱い動物で、過度なストレスを感じると下痢などの体調不良があるので注意が必要です。
ウサギもしつけをすることが可能なので、あらかじめトイレや噛み癖のトレーニングをしておくと良いでしょう。
イルカ
好奇心が強く知能の高いイルカは、その愛らしい外見と性格から多くのヒトを魅了しています。
私がアニマルセラピーに興味をもったのも、イルカと一緒に泳いだときに受けた衝撃と感動がきっかけでした。
イルカを用いたアニマルセラピーの歴史は浅く、1970年代後半にアメリカで研究され始め、日本国内では1996年に導入されています。
発達障害者や心身にトラブルを抱えるヒトとイルカの交流により、様々な良い効果が得られています。
自閉症のヒトがイルカと交流することで心を開き、言葉を発するようになったなどの報告があります。
イルカは健常者と障害をもつヒトを見分けることができ、明らかに異なる接し方をすると言われています。
些細な変化に敏感な感性と好奇心をもつイルカが、ヒトに感心をもって関われることがイルカによるアニマルセラピーの魅力です。
しかし、イルカは大量の海水のある場所でしか交流することができず、セラピー場所が限定されます。
アニマルセラピーで最も活躍している動物
アニマルセラピーの現場で活躍する、犬、猫、馬、ウサギ、イルカについて紹介してきましたが、最も活躍している動物は犬です。
犬は、他の動物と比べて、ヒトの言葉を理解し、寄り添う能力が高いです。
しつけのしやすさや、様々な場所でアニマルセラピーをできることもあり、犬が最も多く活躍しています。
ですが、その他の動物が劣っているというわけではなく、それぞれに素晴らしい効果が得られるのは間違いありません。
アニマルセラピーに向かない動物
様々な種類の動物がアニマルセラピーを行っていますが、なかにはアニマルセラピーに適さない種類の動物もいます。
爬虫類
アニマルセラピーに向いていない動物として、
・カメ
・イグアナ
・ヘビ
などの爬虫(はちゅう)類がいます。
これらの動物は、どんな動きをするのか予測することが難しく、飼い主以外の人間とのふれあいを行うには危険があります。
また、ヒトと動物の共通の感染症として、サルモネラ菌の危険性があります。
サルモネラ菌は、ヒトが感染すると腹痛、発熱、嘔吐、下痢などの症状があらわれます。
海外では、胃腸炎症状だけでなく、菌血症、敗血症、髄膜炎などの重篤な症状も確認されており、特に高齢者や免疫力の落ちている方との交流は危険です。
フェレット
最近、ペットとして人気を集めているフェレットは、イタチ科の動物で、胴長短足のシルエットと人懐っこい性格が人気です。
フェレットといえば、特有の臭いが有名ですが、臭腺の除去手術が済んでいるフェレットであれば、さほど臭いは気になりません。
ですが、好奇心旺盛なフェレットは動きか素早く、予測の難しい動きが多いため、かなりしっかりしつけをしていないと、アニマルセラピーの現場への同行は難しいでしょう。
また、ヒトと動物の共通の感染症としてインフルエンザと狂犬病の危険性があります。
フェレットのインフルエンザは、ヒトと同じように発熱、咳などの症状がみられます。
狂犬病は、全ての哺乳類や鳥類に感染する可能性があり、感染すると治療法がなく死亡に至る恐ろしい病気です。
犬はワクチン接種により狂犬病の予防が義務付けられていますが、日本国内ではフェレットに使用できるワクチンは存在しません。
これらの病気がフェレットからヒトに感染する可能性を考えると、フェレットのアニマルセラピーへの同行は難しいでしょう。
まとめ
アニマルセラピーの現場では、犬が最も多く活躍しています。
医療や福祉の現場だけでなく、学校などの教育の現場でも犬のセラピーは実施されています。
ですが、猫、馬、ウサギ、イルカなどの動物によるアニマルセラピーも高い効果があり、数多くの報告があります。
その動物に合わせた環境でアニマルセラピーを行うことで、動物へのストレスを極力少なくし、その結果、ヒトへのセラピー効果も高くなっていくでしょう。