日本国内で行われているドッグセラピーは、ボランティアによる活動が多く、一般の飼い主が、愛犬と共にドッグセラピー現場を訪問しています。
どの犬にもセラピー犬になるチャンスがあるので、自分の飼い犬と一緒にドッグセラピーに参加することも可能です。
そこで、まずやっておきたいことは、愛犬をセラピー犬として育てることです。
ですが、一般の家庭犬とは違うことを教えないといけないの?
どのくらいのしつけをする必要があるの?
そのような疑問を持つ方に、この記事では、セラピー犬に必要なしつけと、できると便利な小技を紹介します。
セラピー犬になるためのしつけ
愛犬をボランティアとして活動するセラピー犬に育てるためには、しつけが必要です。
ですが、盲導犬や警察犬ほどの厳しく完璧なしつけは求められていません。
セラピー団体ごとに、犬のしつけの度合いが定められていますが、ボランティア活動では、基本のしつけと、セラピー場で対象者や自分たちに怪我がないように過ごすためのしつけができていれば良いとされる場合が多いです。
※実際に訪問する際には、所属団体に確認してください
基本のしつけ
ドッグセラピー活動に関わらず、愛犬と一緒に生活する上で大切な基本のしつけで、日常生活でも役に立つので、ぜひ愛犬に教えてほしい項目です。
基本のしつけは次の5項目です。
・アイコンタクト
・オスワリ
・フセ
・マテ
・トイレ
アイコンタクト
アイコンタクトは全てのしつけの基本となる項目で、目と目を合わせることです。
単純に目を合わせることが目的なのではなく、飼い主に注目していることが大切です。
飼い主との信頼関係ができていないと、アイコンタクトはできません。
飼い主に注目することで、次の指示に応じる体制が整えられますし、信頼の証にもなります。
アイコンタクトができると、普段の生活の中でも非常に役に立ちます。
例えば、散歩中に道路に飛び出しそうになった犬を呼び止めたり、ドッグランなどで他の犬とトラブルになる前に防止することができます。
オスワリ
オスワリは、犬が指示した場所に座ることで、多くの飼い主が愛犬に教えている項目でもあります。
「オスワリ」の言い方の他にも「スワレ」「シット」などの合図が多くきかれますが、実際に教える際には一つの言葉に限定すると、犬が混乱せずに学習できます。
先述のアイコンタクトでも、愛犬を危険な状況から守るのに役立ちますが、オスワリができると、より犬の突発的な行動を防ぐことができるので、教えておきたい大事な基本のしつけです。
フセ
フセは、犬のお腹が地面にピッタリついている状態のことです。
フセの姿勢は、犬がリラックスしているときの姿勢なので、長時間待たせたいときにフセの姿勢をさせると、犬への負担が軽くなります。
ドッグセラピー中にも、犬の待ち時間は発生しますが、カフェなどの場所で待たせたいときにも、フセができると便利です。
落ち着きがない犬に対しても、フセができると、オスワリよりも更に突発的な動きを防ぐ効果があります。
マテ
オスワリやフセなどの姿勢のまま、その場で待機し、飼い主が合図をするまで待ち続けることです。
オスワリやフセと違い、長時間同じ姿勢を保つ必要があるので、より犬の集中が飼い主に向いている必要があります。
活発な犬など、マテが苦手な犬もいますが、しっかり教えておきたい基本のしつけの一つです。
マテと一緒に、解除の合図「ヨシ」も教えておきましょう。
まずは、オスワリやフセができるようになってから練習した方が教えやすいです。
トイレ
犬を飼い始めたら、まず必要になるしつけの一つがトイレです。
正しい場所でトイレができないと、犬の清潔を保てないですし、その都度掃除をする飼い主としてもストレスとなります。
ドッグセラピーの現場ではもちろん、排泄をさせてはいけない場所は数多くあるので、飼い主の指示で排泄できるように教えておきましょう。
セラピー現場で必要なしつけ
普段の生活の中でも大切なしつけの一つですが、特にドッグセラピーの現場では、しっかり教えておきたい項目で、次の3項目です。
・吠えない
・飛びつかない
・環境に慣れる
吠えない
意図的に犬に吠えさせるのであれば、吠える行為を効果的に使うこともできますが、意図しないところで犬が吠えると、セラピーを受ける対象者の恐怖心を煽る可能性があります。
怖いと感じているセラピー犬には、対象者の心はひらきません。
1頭の犬が吠えると、他の吠えない犬まで「犬は吠えて怖い」というレッテルを貼られてしまう可能性があるので、吠えないように教えておきたい項目です。
飛びつかない
犬の飛びつき行為は、対象者に怪我をさせてしまう危険があるので、飛びつかないようにしつけておきましょう。
対象者に可愛がられ、嬉しくて興奮して飛びついていたとしても、危険であることに変わりありません。
体の大きい犬であれば、対象者を転倒させてしまう可能性がありますし、体の小さい犬でも、飛びついた拍子に爪が当たるなどして怪我を負わせてしまう可能性があります。
ドッグセラピーの現場では、飛びつく以外の行動で、嬉しさを表現できると理想的です。
環境に慣れる
ドッグセラピーを行うときには、対象者のいる施設などに訪問することが多いです。
初めて訪問する場所でのセラピー活動が多く、犬によってはストレスを感じることもあるので、普段から様々な物や音に慣らしておいた方が安心です。
実際の現場では、ドッグセラピーの対象者が車いすや歩行器を利用していることもありますし、現場によっては非常に大きな声を発している人がいることもあります。
普段の生活では目にすることのない医療機器を目にすることもあります。
飼い主が動揺していると、犬にも緊張が伝わってしまうので、犬だけでなく飼い主も環境に慣れておく必要があります。
犬が慣れるまでには時間が必要なこともあるので、焦らず、愛犬のペースで慣らしてくださいね。
できると便利な小技
ドッグセラピー現場で必須の項目ではありませんが、できると便利で、ドッグセラピーの効果を高めるのに役立つ4つの小技を紹介します。
・ゆっくり動く
・余計な動きをしない
・リアクションを返す
・おねだり
ゆっくり動く
ドッグセラピーを受ける対象者にもよりますが、高齢者や障害を持つ方や病気の方などに対しては、セラピー犬の動きがゆっくりしている方が望ましいことが多いです。
ヒトは自分の動きより速い動きに対して恐怖心を抱きやすいので、犬がゆっくり動くことで対象者に安心感を与える効果が高まります。
特に、1対1で関わるときに、犬のゆっくりな動きの効果がでやすいです。
余計な動きをしない
犬の動きが多すぎると、犬が何をしているのかが分かりにくくなってしまうので、犬の余計は極力ない方が好ましいです。
対象者が中等度の認知症患者や発達障害の方だと、犬の動きが複雑になればなるほど、何をしているのか理解しづらくなる傾向にあります。
例えば、対象者と玩具を使ったキャッチボールをしていたとします。
対象者の投げた玩具を犬が持ち帰ってこられたら、対象者の自信に繋げられますし、対象者と犬との信頼関係も高まります。
ですが、対象者の投げた玩具を取りに行く途中で、犬がひとり遊びを始めてしまったら、何が目的だったのか分からなくなってしまいます。
対象者の自信にも繋げられず、信頼関係も築けません。
セラピー犬が狙い通りの動きをできると、効果的なドッグセラピーをすることができます。
リアクションを返す
対象者のとった行動に対して犬がリアクションを返せれば、交流の幅を広げることができます。
リアクションといっても、大きな動きである必要はありません。
リアクションが大きすぎると、対象者を驚かせてしまうかもしれません。
例えば、対象者が犬の体に触れたときに、ゆっくり振り返る程度のリアクションで十分です。
自分がやったことに対して、犬から反応が返ってくることで、その行動をすることの意味が生まれます。
セラピストが間に入ってフィードバックするのは簡単ですが、対象者と犬だけで交流が成り立つと、他の犬とは違うドッグセラピーができるようになります。
おねだり
対象者の持つ玩具やオヤツを欲しいと要求したり、撫でてほしいと要求したり、安全で分かりやすいおねだりができると、犬から対象者にアピールできます。
どのようなおねだりでも構いませんが、安全であることが大事です。
対象者もセラピー犬も、お互いに怪我をしないようにおねだりできると、非常に喜ばれます。
まとめ
これからセラピー犬を育てたい方にはもちろん、既にセラピー犬として活躍している愛犬に、一歩進んだ交流を取り入れたいと考えている方にも参考にしていただきたい、しつけと小技を紹介しました。
ドッグセラピーを受ける対象者とセラピー犬の交流は、ひとつに決まっていません。
人と犬の数だけ交流の仕方があるので、愛犬の癖や特徴を活かして、無理なく楽しいドッグセラピーができるように工夫してみてくださいね。