ドッグセラピーを治療やリハビリ目的で実施している病院

ドッグセラピー

動物を用いた治療法のひとつに、ドッグセラピー(動物介在療法)があります。

日本では、欧米諸国のようにはドッグセラピーが普及していませんが、少しずつ多くの人に知られる存在となってきました。

実際に現場では、どのような効果が得られているのでしょうか?

治療やリハビリを目的としたドッグセラピーをとりいれている病院を紹介していきます。

ドッグセラピーの種類

ドッグセラピーの種類で間違われやすい「動物介在活動」と「動物介在療法」について説明します。

動物介在活動

動物介在活動は対象者と犬とのふれあい活動を中心に行われていて、医療従事者が関わる必要はありません。

動物介在活動を取り入れている施設や病院は増加していますが、そのほとんどはボランティアによる活動です。

月に1回などのペースでセラピー犬連れのボランティアが定期訪問をして、施設の入所者や病院の入院患者とふれあい活動をします。

グループホームなどの施設では、施設の犬として飼育して、入所者たちで犬の世話をしているところもあります。

これらのふれあい活動でも、対象者の精神面を支える効果は数多くの報告されています。

動物介在療法

動物介在療法は、治療やリハビリを目的としていて、医療従事者が計画を立てて行います。

治療を助ける補助療法ですが、動物介在療法をとりいれている病院は非常に少ないです。

ですが、子どもから老人まで、セラピー犬との交流による治療効果はいくつも報告されています。

まみお
まみお

現役ドッグセラピストmamioも、病院で動物介在療法を行っていますが、私たちセラピストは、もっとドッグセラピーが普及することを願いながら、日々活動しています。

動物介在療法を実施している病院

外部のボランティアがセラピー犬を連れて訪問してドッグセラピーをするのではなく、職員によるドッグセラピーを行っている病院を紹介します。

静岡県立こども病院

静岡県立こども病院では、2010年に、日本のこども病院で、1番最初に、常勤するセラピー犬の治療法を導入した病院です。

病院などの特定の施設で活動するために、専門的なトレーニングをした犬たちを「ファシリティドッグ」と呼び、静岡県立こども病院の職員として働いています。

認定特定非営利活動法人 シャイン・オン・キッズ から大型犬を提供され、臨床経験のある看護師が研修後にハンドラーとして犬とペアを組んで活動しています。

同院でのファシリティドッグは、患者の要望に合わせて手術室に同行したり、検査や処置の間、寄り添うことで、精神的な安定を保ち、適切な医療を受けられるようにする役目を担っています。

まみお
まみお

ファシリティドッグ養成機関で時間をかけてトレーニングされた犬なので、警察犬や盲導犬同様、ハンドラーの指示に沿って落ち着いた行動がとれるのが強みですね。

シャイン・オン・キッズでは、静岡県立こども病院の他に、2012年には神奈川県立こども医療センターで、2019年には東京都立小児総合医療センターでもファシリティドッグの大型犬を提供しています。

まみお
まみお

日本の動物介在療法の先駆けです。ファシリティドッグは、子どもたちに寄り添う貴重な存在となっています。

聖マリアンナ医科大学病院

神奈川県にある聖マリアンナ医科大学病院では2015年から勤務犬と呼ばれるセラピー犬が、大人から子どもまで幅広い層の患者に動物介在療法を提供しています。

日本介助犬協会から訓練されたスタンダードプードル犬を提供され、臨床経験のある看護師がハンドラーとなり、週2回活動しています。

まみお
まみお

勤務犬の活動日は限定されていますが、その分、犬の訪問を心待ちにしている患者さんが大勢いいるのですね

医師の指示の元、計画的なドッグセラピーが行われていて、闘病生活を支えたり、リハビリの補助をしたり、終末期の患者の心を支えるなど、チーム医療として成り立っています。

手術前、麻酔が効くまで患者に寄り添ったり、治療ができない患者の苦痛を和らげたり、その活躍は多岐に渡っています。

また、大学病院ということもあり、セラピー効果や犬の感染面に対する研究にも熱心です。

まみお
まみお

今後、日本に動物介在療法を広めるために必要なデータは、同院によって着実に積み重ねられていて素晴らしいです

北里大学メディカルセンター

埼玉県の北里大学メディカルセンターでは、2014年から公益財団法人日本盲導犬協会の協力のもと、動物介在療法を導入しています。

ゴールデンレトリバーなどの大型犬が活躍しています。

獣医学部をはじめとしたさまざまな学部と連携して動物介在療法・動物介在活動の病院での実践を目指しています。

医師、看護師、理学療法士、作業療法士、感染管理担当、医療安全担当、動物行動学研究者、ハンドラーなどの医療チームが協力して動物介在療法を行っています。

まみお
まみお

医療チームに加え、動物行動学研究者も参加しているので、動物愛護の面でも参考になる活動をしています 。

リハビリの現場では、犬の存在が患者のやる気を引き出し、リハビリ職員だけでは困難な心をケアを行えています。

まみお
まみお

看護師だけでなく、理学療法士がハンドラーとなることもあり、より専門性の高いセラピー犬の活躍の幅が広がっています。

松平病院

青森県にある松平病院では、セラピードッグの教育を受けた専門犬を飼い、日常的に動物介在療法を実施しています。

セラピー犬は小型から大型まで複数頭いて、そのケアは障害者の就労継続支援事業所の入所者が担当しています。

セラピー犬の食事を手作りしたり、お散歩をしたり、シャンプーなどのお手入れやトイレの世話をする行為自体が、一つの治療となっています。

入院患者やデイケアの利用者に対してはふらいのドッグセラピーを実施しています。

まみお
まみお

入院患者への動物介在療法だけでなく、犬の日常のケアを障害者の方の担当業務にしているのが、とても素晴らしいです 。

「表情の変化」・「活動性の向上」・「コミュニケーション能力の向上」・「易怒的態度の変化」の効果が得られています。

まみお
まみお

病院と福祉施設が併設されているので、両方の対象者に適切なタイミングでドッグセラピーを提供できるのが魅力です 。

トワーム小江戸病院

※2022年7月末で、ドッグセラピー部門が撤退となりました。

埼玉県にあるトワーム小江戸病院では、専門の動物介在療法士が常勤しており、毎日動物介在療法を行っています。

2008年の開院からセラピーをスタートし、動物介在療法士が訓練をした飼育犬がセラピー犬となっています。

セラピー犬は小型犬を中心に、色々な種類の犬がいて、対象者の行動に対してリアクションを返すことで交流が生まれるようなトレーニングをされています。

まみお
まみお

専門の動物介在療法士がハンドラーとして働いているので、セラピー犬が安心して活動できますね 。精神的に安定している犬のセラピーの方が、高い効果が得られます。

同院は精神科で、認知症患者を中心に、医師・作業療法士・理学療法士・看護士・介護士など医療チームと連携して、ふれあい、リハビリ、レクリエーション活動をしています。

個別のふれあいセラピーだけでなく、個別、集団リハビリにも積極的にセラピー犬を導入しています。

まみお
まみお

個別リハビリだけでなく、集団リハビリにもセラピー犬が活躍しているのには注目です。

動物介在療法は普及するのか

日本国内では医療として行われている動物介在療法は、とても少ない現状です。

ですが、小児科、大学病院、精神科病院などでの活動は確実に広がってきています。

ドッグセラピストmamioは、10年以上ドッグセラピー活動をしてきた中で、数多くのドッグセラピーの効果を実感してきました。

人間の職員だけでは上手くできないことでも、セラピー犬がいることでスムーズにできる治療やリハビリはあります。

動物介在療法が認められ、普及するためには、その効果を、多くの人に安定的に与えられるようにする必要があります。

今、動物介在療法をすることで、どんな効果が得られるのかを、大学病院を中心にデータ化しようと努力されています。

医学的な根拠が示されれば、動物介在療法の効果が認められ、治療法の1つとして確立することができるかもしれません。

まみお
まみお

そうして、日本中の多くの病院で動物介在療法が取り入れられたら、夢のようです!

まとめ

ドッグセラピーには、治療を目的として医療従事者が行う動物介在療法と、治療ではないけど犬とのふれあいでQOL(生活の質)を向上させる目的の動物介在活動があります。

日本では動物介在活動が多く行われていますが、少しずつ動物介在療法も増えてきています。

今回紹介した以下の病院では、それぞれの特徴をもって動物介在療法を実施しています。

子どもから高齢者まで、それぞれの場所で、適切なドッグセラピーが行われていて、数多くの効果が報告されています。

ドッグセラピーをしている医療従事者たちは、まだまだ普及していないドッグセラピーが、1日も早く広がっていくように、日々努力しています。

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