日本では、まだあまり普及していないドッグセラピーですが、少しずつ認知度が上がってきています。
セラピー犬のことを撫でたり、添い寝をしたり、膝の上で犬を抱っこしている様子などをテレビで見かけることがあります。
セラピー犬とのふれあい方は色々ありますが、実際のセラピー現場では、どのようなことをしているのでしょうか。
これからドッグセラピーについて知りたいと思っている方にむけて、ドッグセラピーとは、どのような活動なのか、どんな種類や効果があるのかを詳しく紹介していきます。
ドッグセラピーとは?
ドッグセラピーとは、アニマルセラピーの一種で、人とセラピー犬との交流によって心や体や暮らしに良い影響を与える活動で、精神的に安定する効果があったり、生きがいに感じられたリ、セラピー犬を介して人との交流が生まれたりと、色々な効果が得られます。
人とセラピー犬との関わり方に決まりはなく、どんなドッグセラピーをするかは、セラピー団体によって方針が全然違います。
多くの対象者の前で芸披露などのレクリエーションを行う方法もあれば、1人の対象者と1頭のセラピー犬がじっくりふれあう方法もあります。
ちなみに、ドッグセラピストmamioの活動は、個別のふれあいを中心として行っていますが、月に1~2回程度レクリエーションを行っています。
どちらの活動も、ニーズがあります。
また、セラピー犬についても様々です。
セラピストの言うことを完璧に聞くように躾をしたセラピー犬でセラピーをする団体もあれば、基本的な躾はするけど犬の個性を活かしたセラピーをする団体もあります。
どちらも別々のニーズがあり、どちらの方が良いのかは決めることができません。(両方できると無敵ですが)
他にも、特定の種類の犬だけに限定してセラピーをしている団体もあれば、様々な犬種が参加している団体もあります。
どれが正しいドッグセラピーなのかという正解はありません。
対象者に合わせて、その時々で1番良いと思う方法をセラピストが選んで活動しています。
こちらは関西テレビNEWSでドッグセラピーの特集をされたときの2021年2月の動画です。
特別養護老人ホームでのドッグセラピーの様子で、ドッグセラピーの参考になると思います。
引用元:関西テレビNEWS「柴犬に癒される『特別養護老人ホーム』 動物と一緒に暮らす…西日本で唯一の試み」
また、私mamioの実体験も下記から見ていただけますので、参考になると幸いです。
ドッグセラピーの種類
ドッグセラピーは
◇動物介在活動
◇動物介在療法
◇動物介在教育
の3つの種類に分かれています。
動物介在活動(Animal Assisted Activity)
最も多く行われているドッグセラピーで、セラピー犬と共にセラピストが施設などを訪問し、動物とのふれあい活動やレクリエーションを行う活動です。
そのほとんどは、ボランティアによるもので成り立っています。
医師などの医療従事者は関わっていませんが、セラピーを受けた対象者の心の安定や生活の質の向上(QOL)など、動物介在活動による効果は数多く報告されています。
動物介在療法(Animal Assisted Therapy)
医療従事者が治療やリハビリの目的で行っている活動で、動物介在療法を行う目標を設定し、計画に沿ってセラピー活動を進め、カルテなど公式に記録して評価をします。
治療としてのドッグセラピーをしているところは、日本では少ないですが、小児科や精神科、リハビリテーションの現場で活かされています。
ドッグセラピストmamioは、精神科病棟で動物介在療法を行っています
動物介在教育(Animal Assisted Education)
子どもと犬がふれあうことで、子どもの心のケアや、命の大切さや生き物を大切にする思いやりの心を育むことを目的とした活動です。
セラピー犬と共にセラピストが、保育園や、児童館や小学校などを訪問して活動することで、子どもの発達に良い効果が得られています。
動物とのふれあいを目的とする活動もあれば、動物とふれあうことで子どもの意欲を引き出すことを目的とする活動もあり、セラピーによって活動目標は様々です。
ドッグセラピー現場では何をしているのか
先に説明した通り、ドッグセラピーには色々な方法があります。
大きく分けると
◇ふれあいによるドッグセラピー
◇レクリエーションによるセラピー
◇リハビリテーション
の3種類に分けられます。
ふれあいによるドッグセラピー
セラピー犬とセラピーを受ける対象者が1対1、もしくは1対少人数の対象者によって行われます。
対象者がセラピー犬を撫でたり、膝の上に抱っこをしたり、おやつをあげたり、お手などの芸をするなどして、比較的自由にふれあいます。
常にドッグセラピストが傍にいて、交流を見守り、必要があればフォローをします。
積極的に犬と関わりたい対象者は、セラピストの助けがなくても、自発的にセラピー犬との距離を縮めてこられるので、お互いに安全に楽しい時間が過ごせるように見守りをします。
あまり犬に慣れておらず、セラピー犬との関わり方が分からないような方に対しては、セラピストが間に入って少しずつ慣れていただきます。
その際、無理に勧めることはしないで、対象者のペースが崩れないように配慮します。
犬に触れ合いわけではないけれど、他の人とセラピー犬の様子を眺めていたいという対象者もいらっしゃいます。
そういう方にも楽しい時間を過ごしてもらえるよう、セラピストがつなぎ役となります。
レクリエーションによるセラピー
複数の対象者の前で数頭のセラピー犬が芸披露などのレクリエーションを行います。
参加する対象者のレベルや人数によって、プログラムの内容を決めていきます。
参加者が10名以内であれば、セラピー犬の動きがあまり大きくなくても全員に見てもらいやすいですが、参加者が30名にもなると、セラピー犬の動きがダイナミックな方が見てもらいやすくなります。
犬の動きが小さいときには、同時に数か所で行うなどの工夫をすることも大切です。
それから、参加される方に合わせたプログラムにする必要があります。
身体の動きが不自由な方が多いなら、動かさなくても取り組めるプログラムにしたり、反対に、身体を動かすことでリハビリ効果を得たいのであれば、できる動きを活かしたプログラムにします。
静かなプログラムだと眠くなってしまうようであれば、ダイナミックなものを中心に取り入れます。
内容を間違えると、レクリエーションは失敗に終わる可能性が高いです。
参加者の状態に合わせたプログラム内容の準備が重要です!
リハビリテーション
セラピー犬と対象者が1対1の状態で行い、必要に応じて理学療法士などのリハビリ専門スタッフと協力して行います。
犬を撫でたり、犬に玩具を投げるなど上半身のリハビリだけでなく、マッサージや歩行訓練に同行することもあります。
いずれも、対象者の身体の様子に合わせて、適切な場所にセラピー犬を配置して、より効果を高めます。
セラピー犬がいることで、辛いリハビリが楽しくなり、意欲的に取り組めるようになります。
ドッグセラピーの効果
ドッグセラピーの主な効果は、「精神的作用」「身体的作用」「社会性の向上」の3つがあります。
精神的作用
「精神的作用」は、セラピー犬とのふれあいで癒しを感じたり、心を落ち着かせる効果が得られることで、日常生活の中でも多くの人が経験しているのではないでしょうか。
実際の現場では、不安な気持ちが強く、落ち着いて座っていることができない対象者が、犬とふれあうことで心が落ち着き、笑顔で過ごすことができたという事例を多くみかけます。
また、施設に入所している利用者で、家に帰りたいとネガティブな気持ちになっている方に寄り添い、犬が生きがいとなり前向きな気持ちになれたという事例もあります。
ドッグセラピーの効果の中でも、精神的作用はとても大きいです。
身体的作用
「身体的作用」は、身体のリハビリの補助効果のことです。
手先の不自由な対象者は、通常であれば細かい作業を嫌って避ける方が多いです。
でも、セラピー犬におやつをあげるために、小さいおやつを手に持って、場合によっては小さくちぎって与えてくれることもあります。
セラピー犬を可愛がりたい、喜ばせたい一心で、自然に身体のリハビリをする効果に繋がっている事例を私も現場でよく見かけます。
また、高齢者は、視覚、聴覚、嗅覚、触覚など、各感覚の機能低下がみられることが多いです。
ドッグセラピーの中で、そのような感覚をたくさん使っていただくことで、機能低下の防止効果が期待できます。
社会性の向上
「社会性の向上」は、犬がいることによって、他の人との交流が広がることです。
施設などに入所されている方の元へ訪問してドッグセラピーをすることが多いですが、入所している方によっては人とのコミュニケーションを上手くとれず、集団生活に馴染めない方もいらっしゃいます。
そんな方でも、犬がそばにいることで、他の方と一緒に犬を撫でたり、会話をするきっかけにすることができます。
ここでは、一般的に言われている効果を3つ紹介しました。
これらの効果を活用することで、対象者の抱える問題に寄り添い、症状を緩和させていきます。
どうして犬なのか?
アニマルセラピーでは、犬以外の動物もたくさん活躍しています。
猫、ウサギ、馬、イルカなど小さい動物から大きい動物まで様々です。
それぞれに、人とふれあうことで、多くの効果が得られていますが、アニマルセラピーの中で最も活躍しているのは犬です。
犬は太古から、狩猟や牧羊のパートナーとして、人と共存してきました。
その後も、警察犬や盲導犬、そしてペットとして常に犬は人と近い存在にあります。
そもそもドッグセラピーが始まったきっかけは、負傷した兵士を癒す馬だったそうで、乗馬によるセラピーなどの効果はとても高いです。
でも、馬は身体が大きく、室内でのセラピーには不向きですし、セラピーができる場所が限られてしまいます。
イルカも同じで、海水の中にしかいられないことから、セラピーができる場所が限られます。
猫やウサギは身体が小さく、犬と同じように色々な場所へ連れて行くことができます。
愛らしさもあり、見ていて癒されること間違いないのですが、犬と違って訓練がとても難しい上に、飼い主ではない人間の傍に寄り添うことを好まない個体が多いので、セラピー現場で活躍するのは難しいです。
一方、犬は訓練もしやすく、犬の動きを予想しやすいです。
そして、昔から人間と共に行動することが多く、人に寄り添うことを好む個体が多くいます。
最近の研究では、犬の脳は人の脳と仕組が似ていて、人の喜怒哀楽を読み取ることができるとも言われています。
セラピーの対象者となる人たちは、何らかの理由で心身の状態が不安定になっていることが多くあります。
そんな方に寄り添う動物として、犬はとても優秀です。
対象者に威圧感を与えず、ただ寄り添うことができるのです。
犬がもたらす安心や癒しの感情は、人間にはとてもできないものなのです。
セラピー犬については、コチラの記事で解説しているので、参考にしてください。
ドッグセラピーを行っている場所
ドッグセラピーは、どのような場所で実施されているのでしょうか。
動物介在活動が実施されている主な場所は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの老人施設です。
また、一般企業においても、セラピー犬の定期訪問が行われています。
治療として実施されている動物介在療法が実施されている主な場所は、小児科や精神科などの病院です。
大学病院では、その他の診療科でも広くドッグセラピーが行われているところもあります。
動物介在教育は、小学校や児童館などの教育現場で実施されています。
まとめ
ドッグセラピーは、人と犬がふれあうことで、心の安らぎや意欲を引き出すなど様々な効果があります。
その効果を利用して、医療機関では薬を使わない非薬物療法として活用されています。
日本では、まだ普及していないドッグセラピーですが、少しずつ多くの人に知られてきています。
ドッグセラピー現場では、犬にストレスがかからないように注意しながら、対象者の安全に気を付けて、楽しいひとときを過ごせるようにセラピストが縁の下の力持ちとして活動しています。