セラピー犬とはどんな犬?セラピー犬の仕事内容やセラピーの効果を紹介します。

ドッグセラピー

働く犬にはいくつか種類があり、警察犬や盲導犬、介助犬、災害救助犬などの犬たちが、日々現場で活躍しています。

その中で、最も人の心に寄り添う仕事をしている「セラピー犬」について、現役ドッグセラピストのまみおが詳しく紹介していきます。

セラピー犬とは?

人と犬との交流により、身体や心のケアを行う活動を、ドッグセラピーと呼びます。

セラピー犬とは、ドッグセラピーの現場で活躍している犬たちのことです。

セラピー犬は、それを仕事として働いているプロの犬もいれば、飼い主と共にボランティア活動に参加している犬もいます。

全国でセラピー活動を行っている大きな団体 JAHA(公益財団法人日本動物病院協会) では、年間、延べ6000頭以上の犬がセラピー活動をしています。

その他にもセラピー団体は数多く存在しており、各地で数多くのセラピー犬が活躍しています。

セラピー犬の仕事内容

人と犬が交流して行うドッグセラピーですが、実際にセラピー犬はどのようなことをしているのでしょうか。

セラピー活動をしている団体によって、その内容は異なっていますが、大きく分けると

①ふれあいによるドッグセラピー

②レクリエーションによるセラピー

③リハビリテーション

の3つに分けられます。

ふれあいによるドッグセラピー

ふれあいによるドッグセラピーでは、対象者がセラピー犬を撫でたり、膝の上に抱っこをしたり、おやつをあげたり、お手などの芸をするなどして交流します。

まみお
まみお

セラピー犬に触れて、その温もりや毛の柔らかさを体感してもらうのは、ドッグセラピーの醍醐味です。

なかにはセラピー犬に触れるのは怖いけど見ていたい、という対象者もいるので、対象者ごとに合わせた設定をする必要があります。

ドッグセラピストが傍で交流を見守り、必要があればフォローをします。

ふれあいによるドッグセラピーは、対象者とセラピー犬とのゆっくりとした時間を楽しむことができ、人と接することが好きな犬には負担が少なく行える活動です。

セラピー犬の役割は、対象者の膝上に抱っこされたり、身体を撫でてもらったり、オヤツをもらったり、玩具で遊んだりと、様々あります。

与えられた空間で出来ることに限りはありますが、比較的自由度の高い交流です。

レクリエーションによるドッグセラピー

レクリエーションによるドッグセラピー犬が対象者の前にでて、芸披露などのレクリエーションを行います。

対象者の数は10名以上の大集団になることが多い活動です。

対象者に見学してもらうプログラムもあれば、対象者に協力してもらって芸を成り立たせるプログラムもあります。

見学してもらうプログラムとしては、ドッグダンスやジャンプなど、セラピー犬の大きな動きを披露するものが多く活用されています。

対象者参加型のプログラムとしては、対象者の持った道具をセラピー犬が飛び越えたり、セラピー犬が道具を運んで届けるなど、集団の中でも小さなふれあいがあります。

レクリエーションの時間内に、ふれあい時間を設けていることも多いです。

セラピー犬の役割は、複数の対象者の前で芸披露などを行い、レクリエーションを成り立たせることです。

あらかじめセラピー犬に芸を教えておく必要がありますが、難しい芸でなくても、見せ方によって色々活用できます。

リハビリテーション

セラピー犬を撫でたり、セラピー犬に玩具を投げるなどの動作により、セラピー犬とのふれあいの中で上半身のリハビリ効果が得られます。

また、必要に応じて理学療法士などのリハビリ専門スタッフと協力して、マッサージや歩行訓練に同行することもあります。

リハビリテーションのドッグセラピーは治療の効果があり、動物介在療法の場で使われることが多いです。

セラピー犬の役割は、リハビリテーションが必要な対象者に同行し、精神的な負担を軽くし、スムーズなリハビリテーションができるようにサポートすることです。

リハビリテーションの場においては、対象者の行動に対して、期待通りにセラピー犬の反応が返ってくる必要があります。

例えば、対象者に玩具を投げてもらったら、セラピー犬は玩具を空中でキャッチする、もしくは落ちた玩具と取りに行き、持ち帰ってきて対象者に手渡すところまでを一連の動きとして行います。

対象者の苦痛を和らげ、リハビリテーションへの意欲を高めるために、セラピー犬は必要な動きが常にできるようにトレーニングが必要です。

セラピー犬の活動場所

セラピー犬が、主にセラピー活動を行っている場所は施設と病院です。

なかには、対象者の自宅に訪問し、自宅でのセラピー活動をしている犬もいますが、少数派です。

施設

特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホームなどの老人向け施設を中心に、ドッグセラピーをしている施設が増加しています。

外部のセラピー団体が訪問してドッグセラピーを開催しているものが多いですが、中には、施設の犬として入居者で犬の世話をしている施設もあります。

まみお
まみお

施設で生活していると、人から何かしてもらうことが多いので、動物の世話をするという行為ができるは、非常に効果的な取り組みです。

病院

小児科、精神科、リハビリテーション科などの一部の病院でドッグセラピーを実施しています。

病院の医師、看護師、理学療法士などが連携してセラピー活動を行う動物介在療法として行われています。

まだまだセラピー犬の数もセラピストの数も少なく、ドッグセラピーを希望されている患者に、十分に実施できていない状況です。

ですが、患者の心と身体をケアするドッグセラピーの効果の大きさは、複数報告されています。

まみお
まみお

ドッグセラピーを行っている施設や病院については、コチラで紹介しています。

神奈川県の聖マリアンナ医科大学病院では、セラピーの効果を率先して発表しています。

セラピー犬のもたらす効果

ドッグセラピーの主な効果は、「精神的作用」「身体的作用」「社会性の向上」の3つがあります。

精神的作用

「精神的作用」は、セラピー犬とふれあうことで癒しを感じたり、心を落ち着かせる効果が得られることです。

ペットと暮らしている人は、日常生活の中でも多くの人が経験しているのではないでしょうか。

セラピー犬とふれあうことで、対象者の抱える不安が軽くなり、前向きな気持ちになれるきっかけになり得ます。

人間が対象者の方に寄り添ったり、話を聞くことも大切ですし、効果のある行為なのですが、犬には人間には真似できない精神安定効果があります。

まみお
まみお

ドッグセラピーの効果の中でも、精神的作用はとても大きいです。

身体的作用

「身体的作用」は、身体のリハビリの補助効果のことです。

通常のリハビリでは、体の痛みなど苦痛を耐えて行う必要がある場合も多くあります。

リハビリは、理学療法士など専門のスタッフが行いますが、最終的にはリハビリをする対象者本人の意欲が大切です。

セラピー犬が、その意欲を引き出す役割を担います。

セラピー犬には、精神的に対象者を支え、痛みを和らげながら、辛いリハビリを少しでも楽しみのあるものに変える力があります。

理学療法士が付き添うリハビリ以外の場面でも、セラピー犬とのふれあいの中でリハビリ効果が得られることもあります。

例えば、セラピー犬を撫でようとする動作をするために、対象者は姿勢を整えたり、腕を伸ばす必要があります。

また、セラピー犬にオヤツを与える動作をするために、オヤツを食べやすい大きさに千切ったり、オヤツを持ってセラピー犬の食べやすい場所まで運ぶ動作が必要となります。

そのひとつひとつの動作が、リハビリとなり得るのです。

セラピー犬とふれあうことで、対象者本人がリハビリのつもりがなく、楽しい気持ちで自然と体を動かすきっかけを作れるのです。

社会性の向上

「社会性の向上」は、犬がいることによって、他の人との交流が広がることです。

施設などに入所されている方の元へ訪問してドッグセラピーをする際、入所している方によっては他人とのコミュニケーションを上手くとれず、集団生活に馴染めない方もいらっしゃいます。

入所期間が短ければ、周囲とのコミュニケーションの必要性は引くですが、入所期間が長くなるほど、周囲とのコミュニケーションは大切になってきます。

ドッグセラピー訪問の機会が多い障害者や高齢者の方が入所されている施設では、入所期間が長くなる場合が多いです。

他人とのコミュニケーションをうまくとれないことが問題視されている方に対して、社会性の向上目的でドッグセラピーを実施することがあります。

犬がそばにいることで、他の方と一緒に犬を撫でたり、会話をするきっかけにすることができます。

どうして『犬』なのか

アニマルセラピーでは、猫、ウサギ、馬、イルカなど、犬以外の動物もたくさん活躍していますが、最も多く活躍している動物は犬です。

どうして犬が一番多く活躍しているのでしょうか。

犬が活躍しているのは、ドッグセラピーの現場だけではありません。

盲導犬、警察犬、聴導犬、介助犬、災害救助犬、麻薬探知犬など、幅広い分野で犬たちは人間とともに活躍しているのです。

犬は、古くから人間の近くで共に生きる道を選んできました。

人間と一緒に狩りをする狩猟犬や、羊の群れをコントロールする牧羊犬など、人と犬は共に協力し合って暮らしています。

犬は進化の過程で人と共存することを選んできました。

犬は学習能力が高く、訓練により様々なことを習得できます。

そして、人に寄り添うことを好む個体が多いです。

さらに、最近の研究では、犬の脳は人の脳と仕組が似ていて、人の喜怒哀楽を読み取ることができるとも言われています。

犬ほどセラピーに適している動物はいないと考えられています。

セラピー犬の種類

どのような犬たちがセラピー犬として活躍しているのか紹介します。

セラピー犬に向いている犬種

セラピーの現場では、小型犬から大型犬まで数多くの種類の犬がセラピー犬として活躍しています。

毛の抜けにくさや訓練性の高さから、現在はプードルが多く活躍している傾向がありますが、種類によってドッグセラピーができない犬はいません。

実際に、コーギー、ポメラニアン、マルチーズ、雑種など多くの犬種が現場で活躍していますし、小児病棟ではラブラドールレトリバーなどの大型犬が働いています。

セラピー犬に向いている性格

知らない人間と会うことや、知らない場所に行くことがストレスに感じてしまう犬は、あまりドッグセラピーに向いていません。

特に、治療を目的としているドッグセラピー(動物介在療法)の現場では、対象者の心身の状態が落ち着いていないことも多々あります。

なかには、大声をだして怒っていたリ、不安が強くて泣き続けていたリ、通常のセラピー現場と比べ、落ち着かない状況もよくあります。

ボランティアのセラピー現場でも、普段の生活環境とは異なり、対象者が車椅子に乗っていたり、杖で歩行をしていたり、ベッド上から起き上がることができないこともあります。

様々な状況に、柔軟に対応できることが求められるため、あまり神経質な犬にはストレスが大きすぎる可能性もあります。

犬の性格を見極めながら、訓練で改善できることなら訓練をしてセラピー犬として育てていきます。

ただ、ボランティアであれば、セラピー現場を選ぶことができるので、苦手な分野を避けてセラピー犬として活躍することもできます。

セラピー犬のしつけ

セラピー犬には、ある程度のしつけを行う必要があります。

盲導犬や警察犬ほどの完璧なしつけは求められないですが、セラピー団体ごとに、犬のしつけの度合いは定められています。

ボランティアであれば、お座り、フセ、マテ、トイレなどの基本的なしつけは求められることが多いです。

また、噛みつき(甘噛み)、とびつき、無駄吠えのような攻撃的な行動のないことも求められます

愛犬をセラピー犬にしたいと考えている方は、コチラの記事を参考にしてくださいね。

動物介在療法の現場では、治療に高い効果を与えるため、セラピー犬としてのしつけも必要となります。

例えば、歩行訓練中の対象者に同行する場合は、対象者の歩く速度に合わせてセラピー犬が歩く必要があります。

ハンドラーであるセラピストではなく、対象者を意識しながら行動ができるように訓練をします。

まとめ

セラピー犬とは、人と犬との交流により身体や心のケアを行う活動、「ドッグセラピー」の現場で活躍する犬のことです。

ドッグセラピーの活動は、そのほとんどがボランティアによって行われていて、まだ日本ではあまり普及していません。

ですが、ドッグセラピーの活動は、対象者の方に確実に良い影響を与えていて、いくつもの症例報告がされています。

セラピー犬が、盲導犬や警察犬と同じくらいの認知度になるには、まだ時間がかかりそうですが、聖マリアンナ医科大学病院(川崎市宮前区)などの医療機関を始めとして、ドッグセラピーの効果を示すための活動は進んでいます。

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