人間はストレスを感じた時には、美味しいものを食べたり、おでかけをしたりして、上手くストレスを解消して暮らしています。
人間と同じで、犬も日常の生活の中でストレスを感じていて、ストレスにより体調不良になることもあります。
愛犬のストレスに対して、飼い主は次の3つを行う必要があります。
①犬がストレスを感じていることに気が付き
②ストレスの原因を特定して
③ストレス解消の対策をとる
そこで、愛犬のストレスに気づくための『ストレスサイン』と、ストレスの原因と、ストレス解消法を順番に紹介していきますので、参考にしてください。
犬のストレスサイン
言葉を話すことができない犬がストレスを感じたときには、しぐさや行動に現れます。
犬は、とても忍耐強いので、飼い主がいち早くストレスのサインに気がついてあげることが大切です。
まずは、代表的な犬のストレスサインを紹介します。
軽いストレスサイン
犬が緊張していたり、不安や恐怖心を感じているときには、カーミングシグナルという行動がみられます。
カーミングシグナルは、自分や相手を落ち着かせるための行動であり、犬の心の声です。
軽度のストレスを感じているときにみられるストレスサインを紹介します。
ストレスサイン | 犬の気持ちと状態 |
あくびをする目を細める | ストレスを感じている状態だが、我慢をしています。※注意※ 眠い時にも同じ動きがあります |
体を掻く身体をブルブル震わせる | 緊張をしてしていたり、嫌なことを我慢しています。※注意※ 身体が痒いなどの皮膚トラブルがあるときも同じ動きをするので、その場合は動物病院を受診してください。 |
目をそらす | 相手が怖かったり苦手なときなど、ストレスを感じています。 |
鼻を舐めるクチャクチャ口を動かす | 緊張したり驚いているときに、ストレスを和らげようとしています。 |
体の一部を舐める体の一部を噛む | 退屈などの継続的なイライラやストレスを感じていることがあります。 |
ハアハアする | 緊張していて、自分を落ち着かせようとしています。※注意※ 暑いときにも同じ行動をします |
耳が倒れる | 怖いことや不安なことにストレスを感じています。※注意※ 嬉しいときや甘えたいとき、体調不良のときにも同じ耳の形がみられます。 |
食欲がおちる | 不安や悩みがあると食欲がおち、ご飯を残すようになっていきます。※注意※体調不良で食欲がないこともあります。 |
肉球が湿る | 緊張して肉球に汗をかいている状態です。 |
短時間で終わってしまう行動も多く、すぐに対応しなければならない状態ではないことが多いです。
ですが、ストレスサインが長く続くと、ストレスの影響が大きくなってしまいます。
例えば、身体を舐めたり噛む動作が長く続くと、その部分に皮膚炎や出血などの皮膚トラブルを起こす可能性があります。
愛犬にいつもと違う様子があれば注意深く見守るようにしてください。
また、上の表の※注意※のように、同じ行動をしていても違う意味が込められているときもあります。
ストレスのための行動なのかを、愛犬の表情や前後の行動も合わせて判断する必要があります。
注意が必要なストレスサイン
ストレスの負荷が大きくなると、犬に与える影響が大きくなり、軽いストレスサインよりも激しく、気が付きやすい行動がみられるようになります。
ストレスサイン | 犬の気持ちと状態 |
吠える | 恐怖心や警戒心を感じているために、攻撃的に吠えます。 |
噛もうとする | 嫌なことに耐えきれずに攻撃的な態度で気持ちを示そうとしています。 |
逃げる | その場に留まるのが嫌なほどの恐怖や不安を感じている状態で、安心する場所に行こうとしています。 |
固まって動かない | 強い恐怖や不安を感じて、身動きができなくなっている状態です。 |
震える | 強い恐怖を感じている状態です。※注意※ 痛みを感じていても震えることがあります。その場合は動物病院を受診してください。 |
尻尾が下がる | 怖く、不安な状態です。 |
犬自身への健康状態にも影響を及ぼすだけでなく、飼い主や他人にも怪我を負わせる可能性があります。
これらのストレスサインがあるときは、放置せず、すぐに対応することが求められます。
危険なストレスサイン
犬が極度のストレスを感じると、健康状態に影響を及ぼしてしまうことがあります。
・軽いストレスサインを繰り返す
・嘔吐
・下痢
・食欲不振
・脱毛
・血尿
ストレスは犬にとっても大変こわいもので、健康状態が大きく悪化する可能性があります。
ストレスが原因で重病になる場合もあるので、愛犬の様子を観察しながら、ストレスを取り除いていきましょう。
ストレスの原因と解消法
犬のストレス問題を解決するためには、何がストレスの原因になっているのかをつきとめることが重要です。
ストレスの原因が分かれば、それに合わせたストレス解消法をとることは難しくありません。
ここでは、犬のストレスの原因となることと、それに合わせたストレス解消法を紹介します。
環境の変化
人間の生活では、小さいものから大きなものまで変化は様々あります。
一緒に暮らす飼い主に、結婚、出産、就職などのライフイベントがあると、一緒に暮らす家族が変わったり、家族の行動パターンに変化があり、犬にとってはストレスになります。
また、引っ越しはとても大きな変化で、24時間、慣れない環境での暮らしをしなくてはならないので、大きなストレスとなります。
★『環境の変化』のストレス解消法★
新しい環境での生活に慣れるまでは、犬が安心できるように飼い主が寄り添うようにします。
犬に寂しい思いや不安な思いをさせないように、一緒にいられるときには、犬を撫でたり、おもちゃで遊ぶなどして、犬が安心できるような時間を過ごしましょう。
また、日ごろからクレートやベッドなどの安心できる場所があると、引っ越しなどで環境が変わったときも安心できる場所を作りやすいので、おすすめです。
不快な環境
普段の生活では感じられないような、気温、臭い、明るさ、騒音は、犬にとってストレスになります。
人間にとっては不快に感じないものでも、感覚が鋭い犬にとっては不快に感じることもあります。
明るすぎる照明や、香りの強い芳香剤は、犬にとっては刺激が強すぎてしまいます。
怖がりな犬や老犬にとっては、元気な子供の動きもストレスに感じます。
全ての犬に共通ではありませんが、雷や花火は大きなストレスを感じる犬が多くいます。
★『不快な環境』のストレス解消法★
芳香剤の香りや照明の明るさなど、飼い主によって簡単に改善できるものは、犬のストレスにならないように調整してあげましょう。
子犬や高齢犬は、室内の温度にも敏感なので、暑すぎたり寒すぎたりしないように快適な室温を保つように気を付けます。
近くで花火大会が行われるときや、雷の音が鳴りそうなときには、雨戸を閉めるなど、なるべく音が聞こえないように工夫をして、クレートなど、犬が一番落ち着く場所に誘導します。
大きい音が苦手な犬は、日ごろからCDなどを利用して聞かせながらオヤツを与えることで慣らす対処法もあります。
運動不足
ずっと家の中で動かずに過ごし、散歩や遊びなどの適度な運動ができていないと、犬はストレスを感じてしまいます。
犬の身体の大きさや、性格によって差はありますが、なるべく毎日、散歩などの適度な運動をしないと、どんどんストレスがたまっていっていきます。
★『運動不足』のストレス解消法★
散歩を好きな犬なら、散歩の時間や回数を増やして運動不足を解消する必要があります。
小型犬であっても、十分に運動をさせなければストレスがたまります。
小型犬の散歩は、1日に1~2回で、1回15分程度が目安です。
中型犬の散歩は、1日2回で、1回30分程度が目安です。
大型犬の散歩は、1日2回で、1回30分~60分程度が目安です。
あくまでも目安の時間なので、犬の体調に合わせて調整をしてください。
無理に運動をさせて怪我や病気をしてしまっては、本末転倒ですのでご注意ください。
散歩だけで十分な運動量を確保できなければ、ドッグランなどで運動をさせる手段もおススメです。
雨の日で散歩ができないときや、散歩が好きではない犬に対しては、室内での運動を検討する必要があります。
ボール投げをしたり、ロープの引っ張りっこをするなど、身体を動かす遊びはもちろん有効ですが、犬の嗅覚を使ってオヤツを探すノーズワークも、犬が楽しみながらできるのでおススメです。
留守番
元々、犬は群れで暮らす動物なので、1匹だけで長い時間過ごすことは得意ではありません。
飼い主が外出している間、犬は家で留守番をして飼い主の帰宅を待っています。
家に帰ったら、愛犬が部屋をちらかしていた、なんて経験はありませんか?
これも留守番で不安や寂しさを感じているストレスを示す、愛犬からのサインです。
★『留守番』のストレス解消法★
飼い主と離れて暮らすことが、犬の中で非常事態になっているために留守番が大きなストレスになっているので、留守番の状態に慣らす練習をします。
まずは、サークルやクレートなど、飼い主と離れた場所で、犬が安心できる場所を作ることから始めます。
安心できる場所ができたら、少しずつ飼い主と留守番の経験をさせていきます。
留守番といっても、最初は30秒、隣の部屋に行くだけでOKです。
愛犬が不安で吠えている間は元の部屋に戻らず、愛犬が静かになったタイミングで戻るようにします。
少しずつ愛犬と離れる時間を長くしていき、必ず飼い主は帰ってくるということを愛犬に教えていきます。
お留守番をする時には、飼い主の匂いのついたタオルなどを与えておくと、愛犬に安心を与えることができますよ。
留守番の前には、散歩へ行ったり、たくさん遊んであげるのも効果的です。
愛犬がストレス発散し、満足できますし、体を動かして疲れた後は眠くなるので、留守番中にゆっくり休憩できます。
ただし、留守番直前に行ってしまうと、犬が興奮してしまい逆効果になってしまうので、時間に余裕をもって行ってください。
飼い主が帰宅して留守番が終わると、愛犬は大喜びで駆けつけてくるでしょう。
愛犬のそんな姿を見たら、すぐに構ってあげたくなりますが、ここは我慢です。
愛犬の興奮がおさまってから十分に褒めて、留守番後の正しい行動を教えます。
あらかじめ留守番時間が長くなってしまうことが分かっているなら、ペットシッターを頼むなどの対策も検討してみるとよいでしょう。
プロのならではの接し方で、愛犬に良い効果があるかもしれませんよ。
家族の不仲や不安
人間と密接にくらしている犬ほど、家族の間に流れる不穏な空気は敏感に感じ取ってしまいます。
飼い主の精神的な不安が、犬にも伝わってしまい、愛犬がストレスを感じてしまいます。
家族が喧嘩をしていると、間に入って仲裁しようとする犬の姿は珍しくありません。
どうにか家族を落ち着かせようと、必死に頑張っているのです。
★『家族の不仲』のストレス解消法★
飼い主の普段とは違う様子を感じてストレスを感じているので、やれることは1つだけですね。
犬の前では、飼い主がいつも通り穏やかに振舞うようにすることです。
イライラしたり、悲しかったり、生きていれば色々な感情になります。
でも、それは犬の見えないところで感情を出し、犬の前では平気を装ってください。
愛犬の前では、いつも通りに過ごすようにしたいものです。全部、愛犬のためです!
しつこくされる
犬はスキンシップを好む傾向がありますが、愛犬が可愛いあまりに、何度も何度も撫でたり、抱っこしつづけてはいませんか?
もちろん家族に構われることが大好きな犬は多いですが、それがあまりにもしつこいと、犬にとってストレスに感じてしまうことがあります。
★『しつこくされる』のストレス解消法★
まずは、愛犬とスキンシップをとっているときに、犬が喜んでいるのか、迷惑がっているのかを見極めることが大切です。
飼い主に従順な犬ほど、呼ばれれば近くに来て、飼い主の相手をしてくれるでしょう。
そのときの、犬の表情や態度をしっかり見て、少しでもストレスに感じている仕草があれば、しつこいスキンシップを避けるようにしてください。
過度なスキンシップではなく、一緒に遊んだり、散歩に行ったり、愛犬の喜ぶ方法への切り替えを検討してください。
それから、犬がゆっくり休めるように、体格に合ったサークルやベッドなどを設置して、いつでも休憩できるような環境を作ってあげると良いでしょう。
愛犬を可愛がっていたつもりが、ストレスを与えていたなんて、ショックかもしれませんが、他にもたくさん愛犬を可愛がる方法はありますよ
苦手なことの強要
嫌なことを「やりなさい」と強要されることは、大きなストレスです。
シャンプーやブラッシングや爪切りなどのお手入れを苦手としている犬は多くいます。
他にも、高いところが苦手な犬もいれば、他の犬や人が苦手な犬もいます。
苦手としていることを、無理やりにやらされるのは、嫌なものです。
★『苦手なことの強要』のストレス解消法★
どうしても取り組まなければいけないことでなければ、嫌がることは押し付けないのが1番です。
ですが、爪切りなどのお手入れは、やらずに放置しつづけると危険なこともあります。
無理に一気にやってしまおうとせず、少しずつ慣らしていきます。
ストレスサインがでたら、休憩をはさみ、焦らずに進めていきます。
苦手なことが終わったら、大好きなご褒美をあげて、十分に褒めてあげましょう。
ドッグセラピーを強要されてしまい、「行きたくない!」とその場に座り込んで動きたがらなくなった犬を見たことがあります。
愛犬の苦手なことを無理に押し付けるのは控えたいですね。
まとめ
犬は、とても我慢強いので、小さなストレスを感じていても、頑張ってしまいます。
ですが、ストレスはとても危険です!
自分の体を傷つけたり、嘔吐や血尿などといった健康状態にも影響がでる可能性があります。
まずは、愛犬がストレスサインをだしていないかを注意深く観察してみます。
もし、ストレスサインがあるなら、次はストレスの原因を探り、ストレスを解消する対策をしてください。
飼い主にも犬にもストレスがない理想の暮らしのために、愛犬の様子に変わりがないかを見るようにしてくださいね。