10年以上にわたりドッグセラピストとして活動しているmamioが見たドッグセラピー体験談⑰は、定期訪問中に個別ケアを行ったときのドッグセラピーのお話です。
定期訪問で行うドッグセラピーは、月に一度くらいのペースで行われることが多いため、参加される多くの対象者がセラピー犬の訪問を楽しみにしています。
その中でも、特に個別の関りが有効な方へのアプローチについて、実際の経験をお伝えします。
はじめに

mamioは、病院、介護老人保健施設、障がい者支援施設などの複数の施設で、数千回のドッグセラピー活動経験を積んできました。
コロナ渦では、対象者とセラピー犬が直接触れ合うドッグセラピーは中止となることもありましたが、現在は再び、直接触れ合いできるドッグセラピーへの要望が増えてきています。
その中で、定期訪問によるドッグセラピー(動物介在活動)をさせてもらっている施設で、個別への関りがとても有効な対象者がいらっしゃいましたので、その時の様子を、少し紹介したいと思います。
この記事で、同じような状況があったときの参考にしてもらえたり、ご自身の施設にもセラピー犬が来てほしいな、という気持ちをもってもらえたら嬉しいです。
体験談⑰ 個別ケアを取り入れた定期訪問ドッグセラピーのお話

体験談⑰は、個別ケアを取り入れた定期訪問ドッグセラピーのお話です。
定期訪問のドッグセラピーの多くは、数十人の対象者が集まる大集団に対して、数頭のセラピー犬によって行われることが多いです。
実際、mamioもそのような形での定期訪問のドッグセラピーを行っています。
最初は犬好きな方だけが参加する中規模な会をイメージしていたのですが、何度か訪問しているうちに、9割以上のご利用者様に参加していただける大きな会に発展してきました。
セラピー犬の訪問を楽しみに待っていてくださることは本当にありがたいのですが、参加者に対してセラピー犬の数が少ないため、どのように実施すれば皆様に満足していただけるのかが課題になります。
より多くの皆様に楽しんでいただけるように、芸披露やクイズなどの要素も取り入れています。
ですが、施設の担当者に確認してもらったところ、参加されている方が望んでいることは「セラピー犬とのふれあい」ということが分かりました。
目の前に犬がいれば、触れてみたい、撫でたい、抱っこしたい、と思う気持ちは、とてもよく分かりますよね。
そのような状況の中、特にセラピー犬の訪問を心待ちにしている方がいらっしゃいました。
Qさんへの最初のドッグセラピー
車いすで参加されていた半身麻痺のあるQさんは、あまり表情変化がなく、自発的な発語もないため、普段からQさんと接していないセラピストにとっては、どの程度セラピー犬を歓迎してくださっているのか判断が難しい方でした。
時間をかけて交流できれば良いのですが、大人数の対象者に対して、順番に挨拶して回るスタイルのドッグセラピーだったため、短時間でお一人ずつの状況を把握することは難しい状況です。
参加者お一人ずつに挨拶しながら回っている際、Qさんの膝の上にセラピー犬が前足を自発的に乗せると、Qさんは動く方の手を犬に寄せて、手の甲でゆっくりと撫でていました。
Qさんとセラピー犬の関係が良好に見えたので、セラピストはセラピー犬が膝の上に体重をかけて重くないか確認する程度で、静かに見守ってみました。
しばらくすると、身体が傾きそうになったQさんの姿勢を直しに来てくれた施設職員さんが声をかけてくれると、セラピー犬を「かわいい」と表情を変えずに撫でながら発言されていました。
個別のふれあい時間の後、職員さんに居室に戻るか確認されていましたが、最期まで参加されていました。
普段のQさん
Qさんとの個別の交流を終えた後、施設の職員さんから話を聞くことができました。
半身麻痺の影響で車いす乗車中の姿勢が崩れやすく、体に痛みが生じることから、普段のQさんは長時間車いすに乗ることを避けているそうです。
そのため、居室のベッドで過ごすことが多く、レクリエーションなどの活動に参加しても、すぐに部屋に戻りたがる傾向があります。
途中で職員さんが姿勢修正を行うものの、身体の痛みがあるために、どうしても居室のベッドで臥床したいと希望されます。
一方で、Qさんは犬の飼育歴があり犬の扱いに慣れているとのことです。
長く飼育していたこともあり、とても犬が好きでセラピー犬の定期訪問も楽しみに待っていてくださったそうです。

定期訪問だと対象者の普段の様子は分からないので、施設職員からの情報は貴重です!
訪問時に様々な情報が聞けるように、職員さんとの信頼関係も大事にしたいですね。
セラピー犬と過ごしたことの効果
先述しましたが、Qさんは長時間車いすで過ごすことを避けていて、普段はすぐに居室に戻ってしまうとのことです。
そのQさんが、セラピー犬を見たいという思いから、自らの意思でレクリエーションに最後まで参加されました。
しかも、直接セラピー犬とふれあっている時間だけでなく、その後の時間も居室に戻ることはありませんでした。
少し離れた場所にいるセラピー犬の様子を眺めていたり、クイズに参加することも、しっかり楽しんでいただけたことで、Qさんの活動時間を普段より長く提供することができました。
また、セラピー犬とふれあっている間は、膝の上に犬の体重がかかっても「痛くない」「重くない」と受け入れてもらうことができました。
痛みよりもセラピー犬とのふれあいを優先したいという意思を感じられ、とても嬉しかったです。
これには施設職員さんも驚き、「セラピー犬のおかげだね!」と喜んでくださいました。
集団ドッグセラピーの中でも、身体と精神の両面の健康を促進する、個別の心身の賦活効果を得ることができました。
Qさんを配慮したドッグセラピー

初回のドッグセラピーで楽しい時間を過ごすことができたQさんは、その次のドッグセラピーにも参加されました。
定期訪問なので、Qさんだけにゆっくり時間をかけるのは難しい面はありますが、集団としての活動を進行しながらQさんの様子を気にかけていました。
その時々で、どの参加者を優先した会にするかは変わりますが、具体的には下記のような項目について調整しながら進行しました。
・個別のふれあいの際、Qさんの麻痺を考慮した形でセラピー犬を配置し、Qさんの好みに合わせて交流
・数人の参加者に実施してもらうオヤツあげの役割を担う一人になってもらう
・セラピー犬の衣装を選ぶ際、Qさんの好みを優先する
大集団なので全てが予定通りには進みませんが、ドッグセラピーに参加することでQさんの満足感がより大きくなるように配慮をしました。
もちろん、他にも考慮すべき対象者もいらっしゃるので、参加しているセラピストで連携をとりながら皆さんに楽しい時間と感じてもらえるように工夫しています。
ドッグセラピーの効果を示すこと
今回、Qさんに向けた取り組みは定期訪問ドッグセラピーの中で、個人的に行ったことです。
施設の職員さんからの情報や協力があるからこそ、ドッグセラピー活動を意義のあるものにできています。
本当にドッグセラピーは1人では難しい取り組みだと感じています。
そして、これらの取り組みについては、訪問先施設と連携しながら、しっかり効果を数値化していくことが大切だとも感じています。
ドッグセラピー(動物介在療法)が広く認められ、より多くの現場で取り入れられるには、その効果の証明が求められます。
セラピー犬とドッグセラピストがいて、その活動を受け入れてくださる施設側があり職員がいる。
そんな素晴らしい世界が、当たり前になる日本の未来に期待したいですね。
さいごに

体験談⑰は、個別ケアを取り入れた定期訪問ドッグセラピーのお話を紹介しました。
定期訪問によるドッグセラピーでは、参加される対象者一人一人についての情報をしっかり把握するのは難しい状況があります。
参加される人数が多ければなおのこと、個人に合わせた活動は行いにくくなってしまいます。
だからこそ、施設の職員さんの協力と情報はとても大事です。
それなしでは成り立たないと言っても過言ではありません。
参加者の普段の様子を見ている施設の職員さんからの貴重な情報なくして、意義のあるドッグセラピー活動は行えません!
楽しい時間の提供ということも大切ですが、施設の職員さんの協力を得て、より良い活動にしたいですね。
集団の活動であっても、可能な限り対象者の背景や現状をしっかり把握したうえで取り組むことができれば、ドッグセラピーは治療効果につながります。
セラピー犬も対象さんも、みんなが健康で幸せな時間を過ごせますように。
