だいぶ浸透してきた「ドッグセラピー」という言葉ですが、愛犬家の中には「我が子もセラピー活動をしてます」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
セラピー犬と対象者が、1対1でふれあう時に、どんなことをしたらよいか迷うことがありませんか?
そこで、現役ドッグセラピストmamioが、現場で使いやすく、愛犬に教えやすいおねだり術を紹介していきます。
「おねだり」は、とても使いやすい技なので、オススメです!
ドッグセラピーの種類
ドッグセラピーには、いくつか種類があり、セラピー内容が分類されています。
その中で、高齢者施設や障害者施設で行われ、混同しがちな動物介在療法と動物介在活動について説明します。
動物介在療法
動物介在療法は、治療やリハビリを目的としていて、医療従事者が計画を立てて行います。
治療の一環として行うドッグセラピーですが、日本ではまだあまり普及しておらず、一部の病院でしか行われていません。
動物介在活動
動物介在活動は対象者と犬とのふれあい活動を中心に行われていて、医療従事者が関わる必要はありません。
セラピーを受ける対象者の心のケアや、楽しい場の提供として行われるドッグセラピーは、ボランティアを中心に行われており、日本国内でも実施しているところが増えてきています。
ドッグセラピーの方法
ドッグセラピーは、犬と対象者が交流することで成り立ちますが、こうしなくてはいけないという決まりは何もありません。
ドッグセラピーをする団体ごとに決まりはありますが、かなり自由度の高い活動なのです。
そのため、せっかくセラピー犬と対象者が交流をする機会があるのに、やり方によっては効果があまり出ないこともあります。
そこで、ドッグセラピストが自分で工夫して、より効果の高い方法を考える必要があります。
おねだりの効果とは?
ドッグセラピーには色々な方法がありますが、セラピー犬の方から対象者に甘えることができたら、交流を広げやすくなります。
普段の生活の中でも同じなのですが、家の中で愛犬と過ごしているときに、愛犬が甘えん坊な姿を見せてきたら、飼い主は嬉しい気持ちになりますよね。
そして、おねだりする愛犬の要求に応えようとします。
ドッグセラピーの場でも同じことなのです。
交流しているセラピー犬が、おねだりをしてきたら、対象者の多くは「何かしてあげたい」「期待に応えてあげたい」という気持ちになります。
セラピーを受ける立場にある方は、日常的に介護される立場であることが多く、自分から誰かに何かをやってあげる機会が少ないです。
なので、セラピー犬のおねだりに応える役割を作ることで、その方の自尊心や意欲を向上させることができるのです。
おねだりする物
対象者の食事時間にセラピー犬が同席できる場合は、対象者のご飯に対しておねだりをします。
ですが、食事に同席できる施設は稀なので、通常の場合はセラピストが持参した犬の好物を利用します。
そこで、まず最初に、愛犬が「おねだり」する程欲しがる、魅力的な物が何かを確認しておいてください。
オヤツでも玩具でも、どちらでも構わないので、愛犬が1番好きな物を選びます。
さらに、その物がセラピー現場で使いやすい物である必要もあります。
対象者と交流するときに、オヤツを使ってはいけないなどの決まりがないか、事前に確認しておきましょう。
オヤツの種類や量
1番使いやすく、分かりやすく愛犬がおねだりしやすいのがオヤツです。
オヤツを使用する場合の注意点として、愛犬の体格に合わせて摂取カロリーを考慮してください。
オヤツを食べた分、食事のカロリーを調整して肥満にならないようにしましょう。
セラピーも大事ですが、まずは健康第一です!
大きいオヤツは千切って小さくしてから、セラピーで使うようにします。
ただし、クッキーなど、割った際にカスが出やすいオヤツは、事前に小さく割ってから持参しましょう。
セラピー現場に、自分たちが持ち込んだゴミを落として帰るようなことがないように細心の注意が必要です。
おねだり方法
おねだりの方法は決して1つだけではありません。
対象者の方によって、おねだり方法を使い分けられると理想的です。
対象者に愛犬の好物を持っていただきます。
その好物をおねだりする方法としては、主に「見つめ続ける」「あごを乗せる」「前足をかける」方法があります。
見つめ続ける
好物をもった対象者の目を見つめ続けるのがベストです。
目を見るのが難しければ、好物を見つめ続ける行動でも、おねだり要求の効果があります。
対象者へのアピール力は控えめなので、気付いてもらうのに時間がかかります。
ですので、持続して見続けるのが得意な犬にオススメの方法です。
顎を乗せる
好物を持っている対象者の手、もしくは膝などの体の一部に犬の顎を乗せることで、おねだりアピールをします。
アピール力があり、犬が好きな対象者に対しては非常に有効な手段です。
ですが、そこまで犬とベッタリふれあうことに慣れていない対象者だと、いきなり犬の顔が近づくと恐怖心をもつ可能性もあるので注意が必要です。
前足をかける
好物を持っている対象者の手に、犬が前足をかけて、「お手」のような姿勢をとってアピールします。
顎を乗せる方法と同じくらい、アピールしていることが分かりやすい方法です。
また、犬の顔が近づくよりも恐怖心を抱かれにくいので、より多くの対象者に使いやすいピール法です。
わたしは前足をかける方法を使ってセラピー活動をしていますが、教えやすい方法を選んで挑戦してみてくださいね
おねだりの教え方
どのおねだり方法も、教えるのはあまり難しくないので、余裕があれば3通りの方法を練習してみてください。
見つめ続ける
相手の目を見つめ続ける、という行為は、「アイコンタクト」をしていることです。
なので、アイコンタクトの強化をすれば良いのです。
アイコンタクトの教え方は、子犬でも成犬でも同じなので、子犬へのアイコンタクトの教え方の記事を参考にしてください。
通常のアイコンタクトができたら、より長い時間アイコンタクトの状態を保てるように練習します。
通常のアイコンタクトの状態を作り、犬の視線が反れそうになったところで犬の名前を呼び、アイコンタクトを継続させます。
視線が反れずにアイコンタクトし続けられたら褒めます。
次に、飼い主がわずかに視線を反らした状態でも、犬の視線が向けられるように練習します。
教え方はアイコンタクトと同じですが、飼い主の視線が違う場所に向けられているので、犬の視線が自分に向けられているか分かりにくいです。
犬の視線の方向に集中して練習してみてください。
顎を乗せる
ご褒美を持つ腕に犬の顎を乗せたまま待機するのが目指す形です。
最初は、ご褒美を持っていない方の腕の上に顎を乗せる練習から始めます。
ご褒美を持っている腕から始めてしまうと、腕に顎を乗せたときに我慢できず、ご褒美を奪い取ってしまうかもしれないので、反対の腕から練習する方が簡単です。
最終的にご褒美を持つ手が右手だとしたら、左手でご褒美を持ち、犬の顔を誘導し、顎が右腕に乗った瞬間に褒めます。
顎をスムーズに乗せられるようになったら、そのままの姿勢で数秒待ってから褒めます。
誘導でスムーズに顎が乗せられるようになったら、少しずつ誘導を減らしていき、最終的には誘導しなくても顎を乗せられるようにしていきます。
待つことができるようになったら、ご褒美を持つ手を右手に変えて、同様に練習します。
顎乗せは、普段から人にピッタリ寄り添うことが好きで、落ち着きのある犬の方が教えやすい方法です。
前足をかける
対象者がご褒美を持つ手や腕に、犬がお手をするように前足を乗せるように練習します。
犬を隣で座らせてから、手にご褒美を持って、犬の身体の前でチラつかせます。
犬が興味を示して、前足を伸ばしてきたら、すぐに褒めます。
なかなか前足が出ないようなら、ご褒美を持つ手の甲にお手をさせて、動作を教えます。
何度か繰り返して、前足をかける動作を教えていきます。
注意点として、犬が前足を対象者の手にかけてから、手前に引き寄せようとする動作があると、犬の爪が引っかかり、セラピー対象者に怪我をさせてしまう可能性があります。
前足は対象者の腕に乗せるだけで、手前に引き寄せる動作がでないように教えてください。
おねだりする時の注意点
セラピー犬がおねだりをしても、対象者の方がスムーズに与えてくれるとは限りません。
そんな時に、吠えることで要求したがる犬もいますが、セラピー現場での要求吠えはNG行為です。
犬の攻撃的な吠える声は、対象者に恐怖心を与えてしまう可能性があります。
おねだりを教えるときに、わざと焦らして練習しておきましょう。
まとめ
愛犬の可愛らしさを最大限に活かした「おねだり」は、ドッグセラピーの現場で効果的に使用できます。
ただ、セラピー現場で使用できるご褒美の決まりがある場合は、その決まりを守っておねだりを活用してみてくださいね。